本当に儲かっている商品は?
突然ですが、社長のみなさんに質問です。
次の質問にすぐに答えられるでしょうか?
①あなたの会社で一番売れている商品は何ですか?
②あなたの会社で一番儲かっている商品は何ですか?
いかがでしょうか?
①はみなさん間違いなく答えられると思います。
それでは②はどうでしょうか?
①との違いは何?と思った方もおられるのではないでしょうか?
今回は、社長が試算表や決算書を見るうえでもっとも知っておいてもらいたい粗利益(売上総利益)についてわかりやすく説明したいと思います。
どうしても数字が出てくるので苦手意識のある方には辛いかもしれませんが、必要最小限に留めるのでなにとぞお付き合いください。
なお、粗利益は経営天気予報のStep 2(解析)において、財務分析(経営分析)をするために用いる重要な指標でもあります。
目次
売れている商品と儲かっている商品の違い
まずは、売れている商品と儲かっている商品の違いについて説明します。
両者はたまたま一致することもありますが、その違いについては正しく認識しておかないと会社の存続に影響するくらい大きな問題になることもあります。
実際、売上を増やすことばかりに注力した結果、確かに売上は増えたけれどその割には手元にお金がなくて経営が厳しい、という会社をこれまでに何社か見てきました。
ちょっと横道に逸れましたが、本題に戻ります。
売れている商品と儲かっている商品について、それぞれの定義を書くとむずかしくなるのでここでは簡単な例で説明します。
例えば、
・70円で仕入れた鉛筆を100円で販売
・100円で仕入れたシャープペンシルを120円で販売
している会社があるとします。
1か月で鉛筆が100本、シャープペンシルが90本売れたとすると、
・鉛筆の売上は100円×100本で10,000円
・シャープペンシルの売上は120円×90本で10,800円
となります。
一番売れている商品とは、売上のもっとも多い商品のことです。
一番数が売れている商品という考え方もありますが、ここでは数量ではなく金額がもっとも多いものとしておきます。
上記の例ではシャープペンシルが一番売れている商品ということになります。
では、シャープペンシルが一番儲かっている商品なのでしょうか?
これを考えるために手元にいくらお金が残っているかを考えてみましょう。
・鉛筆は100円で売っているが70円で仕入れているので、手元に残る金額は1本あたり30円
・シャープペンシルは120円で売っているが100円で仕入れているので、手元に残る金額は1本あたり20円
ということは、鉛筆を100本、シャープペンシルを90本売った場合に手元に残る金額は、
・鉛筆は30円×100本=3,000円
・シャープペンシルは20円×90本=1,800円
となります。
つまり、シャープペンシルは売上こそ大きいものの、手元に残る金額は鉛筆の方が多いのです。
一番儲かっている商品は鉛筆ということになりますね。
儲かる会社にするための販売戦略
それでは、あなたがこの会社の社長だとして、さらに儲かる会社にするためにはどのような販売戦略をとれば良いでしょうか?
戦略①:一番売れているシャープペンシルの販売数量が増えるように広告を出す
戦略②:売上は少ないが鉛筆の販売数量が増えるように広告を出す
特にひねりはないのでシンプルに考えてください。
売れている商品と儲かっている商品の違いがわかっていれば簡単ですね。
この場合は戦略②が正解です。
なぜなら、鉛筆の方が販売した後に手元に残る金額が多いからです。
会社を存続させ、成長させるためには売上を増やすことも重要ですが、それ以上に手元に残るお金を増やすことが重要です。
そのためには一番儲かっている商品が何かを把握して、その販売に集中するのが基本的な戦略となります。
ちなみに、鉛筆やシャープペンシルを販売したときに手元に残るお金は粗利益(売上総利益)と呼ばれています。
会社を成長させるということは、儲かる商品をたくさん売るということ、すなわち粗利益を増やしていくということになります。
あなたの会社で一番儲かる商品を見つける方法
ここまで読んでくれた方には、儲かる商品を売ることの重要性をご理解いただいたと思います。
この例はとてもシンプルなので「そんなの当り前」思われる方も多かったのではないでしょうか?
では、今度はあなたの会社に置き換えて考えてみてください。
一番儲かっている商品は何ですか?
・・・
儲かっているという意味は正しく理解できていても、この質問に答えるのは難しいのではないでしょうか?
なぜなら、通常の会社ではたくさんの種類の商品を扱っており、そのうちどれが一番儲かっているかを知るためには、試算表や決算書を見るだけではわからないからです。
売れ筋の商品については社長の感覚で把握できていると思います。
しかし、その商品はXX円で仕入れているからこれが一番儲かっている!というところまで自信を持って答えられるでしょうか?
この質問に正しく答えるためには、商品ごとに売上と仕入の関係を整理して、粗利益を把握することが必要となります。
経理部にお願いして、商品ごとの売上と仕入の金額を一覧表にまとめてもらいましょう。
このように、きちんと粗利益を「見える化」することにより、感覚ではなく「事実」に基づいた判断ができるようになります。
「事実」を把握できていれば、自信を持った意思決定はもちろん、感覚が正しいのか悩む必要がなくなるので、社長の意思決定スピードも早くなります。
現代のように変化のスピードが速い場合には、中小企業も意思決定のスピードと正確性の両方を高めていくことが重要となります。
会計は正しく理解すれば誰にでも使える強力な武器となります。
少しずつでも大丈夫なので、「社長のための会計」を覚えていって、大企業や競合他社に負けない経営をしていきましょう。
まとめ
今回は売上と粗利益の違いについて説明しました。
売れている商品ではなく儲かっている商品を知ることの重要性について理解いただけたと思います。
粗利益は財務分析(経営分析)を行ううえでもっとも基本となる指標ですので、正しく理解して経営に活用できるようにしましょう!