感情的知性を鍛える訓練方法

「○○さんには毎回細々と説明をしなくてはいけないので、それが他の社員の時間を取り仕事の進行を遅らせる」

「○○さんはきちんとプランを立てて行動しないので、ミスが多くて困っている」

これらは聞き覚えのある、おなじみの話ですか?

「チームで協力して進行させる業務経験」に関する調査結果によると、上記は頻繁に聞かれる不満のほんの一部にすぎません。これらの不満は一部の社員が他の社員と協力をせずに、単独で働くことを好むことにより起こります。

しかし、社員はチームの一員として働くことによって、個々のやる気や仕事のパフォーマンスを向上させることできます。また、チームで協力し合いながら進める仕事は、より早く、より多くのフィードバックを共有しあうことを可能にします。

チームの一員としてプロジェクトに取り組むことから、多くのことを学び、やる気も更に向上したという研究結果も出ています。

オフィスへ出社する必要のない在宅ワークが増え続けている現在、継続的な学習とフィードバックの重要性はこれまで以上に高まっています。社員の育成に携わる担当者は、感情的知性に関連する共感や協力といった社員の態度をこれまで以上に重視すべきです。

なお、感情的知性について知りたい場合、感情的知性の高め方や従業員の採用方法を知りたい場合は、知能指数が高い社員より、感情的知性に優れた社員があなたの会社を成功へ導く!?をご覧ください。

感情的知性を鍛える訓練方法

ここではチーム構築に役立つとてもシンプルな訓練方法である「東西南北」ゲームについて紹介します。

この訓練は、非営利の専門職開発サイトであるNational School Reform Facultyが教育者のために開発した手順に基づいており、学生や社会人に効果的です。

「東西南北」ゲームの準備

事前に「東」「西」「南」「北」の4つの標識を作成し、部屋の四方の壁にそれぞれ掲示します。

4つの「東西南北」それぞれに、新聞用紙サイズの用紙とマーカーを用意してください。各「東西南北」に関連付ける特性を以下のように書き出します。

方位 特性 仕事スタイル
推測する 行動を起こす前に物事の全体的な状況や成り行きに対する見方、判断、可能性を把握する仕事スタイル
西 細部に注意を払う 誰が、何を、いつ、どこに、そしてなぜ行動するのかなど細部に注意を払う仕事スタイル
思いやり 誰の気持ちでも考慮する、行動する前に周りの意見に耳を傾ける仕事スタイル
行動する とりあえずやってみよう!行動したり、物事を試したり、積極的に参加する仕事スタイル

訓練レベル度1(20分)

わずか20分間という短い時間ですが、手順を守るようにしてください。また、最後の2~3分はまとめをする時間に使います。

①まず、部屋の周りに掲示された4つの「東西南北」を参加者に読んでもらいます。
②チームの一員として仕事を行う際、どの「東西南北」が一番自分に近い仕事スタイルかを各自に選択してもらいます。
③参加者にそれぞれ「東西南北」の前に立ってもらいます。訓練の間、その位置に留まってもらいます。
④各自に他の参加者がどの「東西南北」の前に立っているか、それぞれ確認してもらいます。

ここまでの手順を通して、他の参加者(チームメイト)の行動に対して、「あ~それで!だから○○だったんだ!」などと理解を深めるきっかけになります。

⑤グループ内で役割を分担してもらいます。
役割は以下の3つです。

役割名 役割
記録係 グループの応答を記録する
タイムキーパー係 グループのメンバーがタスクを行う最中、時間管理をする
発表係 時間終了時にグループの代表として内容をシェアする

⑥以下の5つの質問の回答を考えるために各グループへ5~8分を与えます。

  1. あなたの仕事スタイルの強みは何ですか?
  2. あなたの仕事スタイルの限界は何ですか?
  3. 一緒に作業するのが最も難しい他の仕事スタイル(「東西南北」)はどれですか?また、その理由はなんですか?
  4. 効果的に一緒に働くことができるように、他の仕事スタイルの人々はあなたのことを知る必要がありますか?
  5. あなたにとって最も価値あるものは何か、他のそれぞれの仕事スタイルごとに1つ述べてください。

⑦各グループがそれぞれの回答を全グループと共有するための時間を与えます。

例えば、以下のような意見があるかもしれませんが、大丈夫です。

「西が細部にこだわるので、北は西に対してイライラする」

「北はプランを立てる前に行動する傾向が有るので、西は北に対してイライラする」

「南は、個人的なつながりを求めるので、チームメンバーの感情的なニーズが満たされていない場合、不快感を募らせる」

「東は、西が細部にまで陥ったときに退屈する」

「北は大きな決断事項に対して皆の同意を得る前に勝手に進めるため、西は困惑してしまう」

⑧最後に、すべての参加者が気付きを発表するための時間を、訓練の終わりに少なくても2分与えてください。

もし、次のいずれかが発表されない場合は、これらも最終確認事項の一部として加えてください。

  • 自分自身や他人の優先傾向に対する意識を高める
  • 意識の向上は共感力を高める
  • 優先傾向には、強みと限界がある
  • 優先傾向は多様な方が、チームワークと結果をより向上させる

なお、優先傾向とは何が自分にとって重要であるかということを意味します。

訓練レベル度2(30分)~学び・理解を深める~

訓練に30分の時間が取れる場合は、訓練レベル度1の④と⑤の間に以下のステップ▲を追加してください。

ステップ▲:過去にチームの一員としてプロジェクトに携わったときの、非常に肯定的(または否定的)な個人の経験を思い出してもらいます。

皆と共有することが快適と感じる思い出を選択しても構いません。

このレベル度2の訓練(ステップ▲)をすることによって、なぜ過去の自分の経験が非常に肯定的(または否定的)であったかを、熟考し理解するように促してください。

このステップの目的は、この訓練を通して学び理解したことを適用できるようにすることです。

▲に続いてレベル度1の⑤~⑦のステップを全てフォローしてもらいます。

最後に、すべての参加者が気付きを共有するために十分な時間を与えてください。

訓練レベル度3(45分)~強化する~

訓練に45分の時間が取れる場合は、訓練レベル度2の「学び・理解を深める」のステップ▲に移行する前に、ウォームアップとして以下のステップ■を追加してください。

ステップ■:目標を達成するために一緒に働くチームメンバーの印象を確認します。

「東西南北」の各チームについて気付いたことについて話し合ってもらいます。

次に、「優先傾向」が何であるかを力説してもらう(熱く語ってもらう)ために数分間を与えます。ここで、「優先傾向」とは何が自分にとって重要であるかということを意味しています。

率直で自然な意見を共有してもらいます。

このステップを行っている最中、チームvsチームのように、異なる方位のチームに敵意をもったり否定的になる傾向の人もたまにいます。そこで、このステップの目的は異なる「東西南北」を選択したチームメンバーを差別したり、決め付けをするためではないということを明確に伝えておくようにします。

自分の方位(チーム)を正当化することが目的でもありません。また、良い悪いを判断するのが目的でもありません。チームに関する個人的な経験を各自が共有する時間を確保してください。

このステップ■を通して、一緒に仕事をしたことのある他のグループの人たちとの過去の経験に反映できる、気付きや学びが共有できます。

最後に、すべての参加者が気付きを共有するための時間を、ステップ■の終わりに与えてください。

引き続き訓練レベル度2と1へ進んでください。

各訓練レベルごとに、気付きを共有し、まとめるための時間をきちんと取ることが重要です。

まとめ

可能であれば、プロジェクトを開始する前にチームでこの訓練を活用してください。チームメイトの仕事スタイルを予め知ることは、この先の作業を行う上で、そしてプロジェクトの準備をする上で、非常に効果のある方法です。

すでにプロジェクトを開始しているチームや、しばらくの間一緒に作業しているチームにとっても、中間プロセスの反映や進行の修正に役立つ訓練です。

既にプロジェクトを完了した場合でもこの訓練はまだ有用な目的を果たします。チームメンバーは、対人関係のスキルを向上させたり、次回の検討事項に反映させることができます。

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